banner-post

教員・研究員からのリレーメッセージ:第1回【今こそ、ご高齢の方々の健康のために、みんなのために】

高齢社会総合研究機構の医学、工学、社会学、情報学など様々な専門分野の教員・研究員より、「いま、伝えたいこと」をリレーメッセージとして掲載します。


【今こそ、ご高齢の方々の健康のために、みんなのために】

飯島勝矢

飯島勝矢
東京大学 高齢社会総合研究機構 機構長・未来ビジョン研究センター 教授

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が猛威を振るう中、外出を控えるご高齢の方々も多いと思います。全国的な緊急事態宣言による外出自粛要請、さらには有名人の方々が新型コロナウイルス感染による肺炎で亡くなってしまうなど、連日良くないニュースばかりが目に入り、憂鬱な毎日を過ごされていることでしょう。
 でも、ずっと家に閉じ込もって動かずにいたり、結果的に食事を抜いてしまったり、誰ともしゃべらなかったりすると、『フレイル(心身の活力が低下し、要介護へ移行する中間の状態)』が進行する恐れがあります。すなわち、生活不活発な状態が続きますと、身体機能だけではなく、心の部分も、そして認知機能までも、良くない方向に向かっていってしまう恐れがあるのです。

 例えば、全身の身体についている筋肉をちょっとイメージしてみましょう。高齢者では、2週間の寝たきりにより失われる筋肉量は、7年間に失われる量に匹敵するといわれております。いまこそ筋肉量を守るためにできることを意識してやりましょう。足踏み、つま先立ち、スクワット等の室内で出来る運動を、そして天気の良い日は人との距離を取りながら散歩やウォーキング等も定期的にやりましょう。
 また、筋肉の維持には栄養のことも忘れてはなりません。バランス良い食事をするのは当然ですが、筋肉を作るために必要なタンパク質(まずは肉、魚・卵・大豆製品)を十分に、そしてビタミンD(魚介類・きのこ類)の摂取も重要です。お口の機能の衰えも軽視できませんね。口周りの筋肉を鍛えるため、噛みごたえのある食材を選ぶことにも一工夫しましょう。
 自粛生活のため、人と会ったり、話したりする機会が減っていませんか。今だからこそ身近な方とおしゃべりを増やしたいところです。ただ、一人暮らしの高齢者に「たくさんおしゃべりしましょうね」と呼び掛けても、なかなか難しいのが現実ですね。そこで大事なのが、’’家族やお友達からの声掛け’’です。高齢の親が遠くに住んでいるならば、その息子や娘、そしてお孫さんが積極的に電話をかけてあげましょう。「おばあちゃん、おじいちゃん、元気? 今何やってるの?」などと、是非ともいつも以上にたっぷりと話を聞いてあげてください。
 そして、このような気が重くなる生活が長引くようならば、徐々に地域での気遣いながら支え合う力も必要になってきますね。もしかしたら、自分の家族に、そして仲良くしていた近所の友達に、予想以上に心身の機能を低下させてしまったご高齢の方もおられるかもしれません。「ちょっとした一言、ちょっとした電話一本」、そのちょっとしたお声がけが大きな意味を持つかもしれませんね。今後、緊急事態宣言が徐々に解除される際に、全てのご高齢の方々の自立機能や社会性、地域の方々とのつながりが少しでも低下しないように、まさに地域力も問われるのでしょう。地域のみんなで支えていきたいものです。

 さいごに、新型コロナウイルス感染症が完全に収束するには、まだまだ時間がかかると思われます。ただ、平時に戻ったとき、自粛生活の影響でフレイルが進行し、「これまで通りの生活が送れなくなってしまった」という状況に陥らないよう、前向きな気持ちで、継続して取り組んでいきましょう。そのために、われわれ東京大学高齢社会総合研究機構は『おうちえ』というテーマを掲げ、日常生活の中でのちょっとした工夫、思いがけない身近なヒント、驚きのノウハウなどを皆で考え、コンパクトにまとめてみました。是非とも全国の多くの方々のお役に立てればと願っております。日々のちょっとした努力や心掛けを継続することが、いずれ大きな成果として実感できると思います。そして、一安心になった時期には、少しだけでも成長できた自分に、一段でも階段を登ることができた自分にきっと出会えることと思います。
 また近いうちに、笑って集まれる日を皆で待ちましょう!さあ、自分の近い将来のために、そして大切なご家族のために、この悩ましい問題を皆で乗り越えましょう!!

(2020年5月8日)