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経済学部・岩本康志教授、第60回日経・経済図書文化賞受賞!

GLAFSのプログラム担当教員でもある経済学部の岩本康志教授が近著『健康政策の経済分析: レセプトデータによる評価と提言』(共著)で第60回日経・経済図書文化賞を受賞されました。IOG/GLAFSのフィールド・福井県の協力を得て、レセプトデータや特定健診情報を総合的に把握するビッグデータを構築。根拠に基づく健康政策の立案をめざす視座を提言しています。
詳しくはこちらから。

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 <審査委員長の吉川洋先生(立正大学教授)による総評抜粋>

「根拠に基づく政策」が立案される前提として必須とされる実証分析の蓄積が日本ではいまだに十分ではない。『健康政策の経済分析』(岩本康志ほか著)は、福井県の協力により利用可能となったレセプト(診療報酬明細書)の個票データを用いて、様々な健康政策についてどれだけ効果があるのか、政策評価した力作である。
深刻な日本の財政赤字を歳出面からみると、中心は社会保障への支出で、中でも著しい歳出増が見込まれているのが医療・介護分野である。医療と介護をつないだデータベースを作り、オーソドックスな手法を用いてこの問題に真正面から切り込んだ本書は実証研究の模範として多くの審査委員から高く評価された。

<受賞の言葉「根拠に基づく評価体制づくり」>

増加し続ける医療・介護にかかる費用を適正化するために、近年は矢継ぎ早に改革が実行されている。そのなかで重点が置かれている、地域包括ケアシステムの構築、病床再編等のサービス提供体制の見直しや、特定健診・保健指導、介護予防給付の導入等の予防を重視した施策には、費用の低下と質の向上の両方を達成できる潜在的可能性がある。
ところが、これまでの改革がどの程度の効果を期待できるか、あるいは発揮したのかについての政策評価が十分に行われているとは言い難い。そもそも、現状の提供体制がニーズに適切に対応していないのは、施策を評価する体制が整っていないがためである。このまま政策評価を根付かせないで改革を進めるのは、問題をもたらす原因を放置して、問題の解決に向かう愚を犯していることになる。現在の医療・介護制度改革において、「根拠に基づく政策立案」ができる体制を整備することは、改革の成果をより大きくするということではなく、そもそも改革を成功させるための前提条件である。
政策評価の体制が整わなかったのは、利用可能なミクロデータが長らく未整備な状況であったことが一つの理由である。そこでわれわれは、約10年前から福井県と東京大学高齢社会総合研究機構による共同研究の一環として、同県をフィールドにして国民健康保険と介護保険のレセプト、特定健診・特定保健指導データの情報を個人について接合した「総合的パネルデータ」を構築し、それを活用して政策研究や政策評価を行ってきた。本書は、この貴重なデータを用いた研究成果を報告したものである。
最近よく聞かれるようになった「根拠に基づく政策立案」は容易に実現できるものではなく、ひとつの学術的根拠が与えられるには相当な労力と資源を要する。検証する課題にとってかならずしも最適ではないデータしか存在しない状況での分析に限界があることを痛感しながらも、われわれの試みを世に問うことができ、栄誉ある賞を頂けたことは望外の喜びである。今回の受賞を励みとして、より良い政策形成に資する学術的根拠を与えるような研究を進めていきたい。