シニアのためのおうち時間を楽しく健康に過ごす知恵 シニアのためのおうち時間を楽しく健康に過ごす知恵

高齢社会総合研究機構
教員・研究員からのリレーメッセージ

高齢社会総合研究機構の医学、工学、社会学、情報学など様々な専門分野の教員・研究員より、「いま、伝えたいこと」をリレーメッセージとして掲載します。

第8回

あなたらしい生活スタイルを築くために

中村美緒 中村美緒 東京大学 高齢社会総合研究機構・大学院新領域創成科学研究科 特任研究員

皆さん、自粛期間をどのようにお過ごしでしょうか?

コロナウイルス感染拡大防止による外出の自粛によって、私も一日の大半をお家で過ごしています。自粛当初は、“これまで忙しくてできなかったことをやろう、掃除とか、料理とか、運動とか…”と思っておりました。しかし、時が経つにつれて掃除もひと段落し、一人で食べるためだけに手の込んだものは作らなくなり、運動はせずにテレビばかり見ている…そして気が付くと、1週間に2回しか外出していないことに気づきました。外に出るときもマスクで顔を覆うため化粧はしません。装いもシャツやスーツではなく伸縮性のある服を着て過ごしています。近くに仕事以外の知り合いがいなかったため、こういう状況になってはじめて、住んで間もない場所での一人暮らしの寂しさを感じました。そしてこのまま自粛が続くと、フレイルになってしまうのではないかと感じました。

“これではいけない!どうにか規則正しい生活をしなければ!” 私はようやく生活を見直し始めました。まずは運動です。これまで身体に貼るだけで筋肉を鍛えてくれる電気刺激用具を使っていましたが、効果はむなしくお腹の肉はたるむばかり。そこで、室内でも容易に運動できるフラフープをインターネットで購入し、テレビを見ながら続けています。一人で行っていると次第に怠けるようになるので、毎日友人にお腹と太ももの周径を報告することにしました。次に友人に会ったとき「少しやせたね」と言われることが目標です。食事は、テレビ電話を通じて友人や妹家族と一緒に食べるようにしました。姪っ子に「何食べているの?おいしい?」と聞かれますので、見栄えやおいしさも考慮した料理を作るようになりましたし、夜中にラーメンを食べるといった不規則な時間の食事もなくなりました。一人分の買い物は週1回で済んでいましたが、一駅先のおいしいパン屋さんに歩いていく、野菜が安くておいしいスーパーに行くなど、3日に1回は買い物に出かけるようにしました。また、ご近所にお住まいのフレイルサポーターさんのお宅まで歩いて行き、玄関越しに挨拶をして元気をもらって帰ってくるという活動も始めました。外に出るまでが億劫だったのですが、一旦出るととても気持ちがよく、歩くことが楽しく感じてきました。

改めて今回の引きこもり生活を振り返ると、すべて自分自身のためだけにやると、やる気が起きないことに気づきました。誰かに会ったり、外出して何かをしたり、一緒に活動したりするなかで自分の存在を認めてもらうことが、私のこれまでの生活を保つ原動力であったのです。

私の専門領域である作業療法の中では、何らかの活動あるいは活動を通じた集まりの場が、集まった人々それぞれに意味を持つと考えられています。活動の輪に入らずその場にいるだけでも、その人にとっては、家から歩いて出かけるといった価値を見出すことができるのです。ただ楽しそうとか、なんとなく参加してみたいという理由で十分です。様々な方法で活動に参加してご自身の生きる上での原動力を見つけ、あなたらしい生活スタイルを築き上げてみてください。

(2020年5月14日)