シニアのためのおうち時間を楽しく健康に過ごす知恵 シニアのためのおうち時間を楽しく健康に過ごす知恵

高齢社会総合研究機構
教員・研究員からのリレーメッセージ

高齢社会総合研究機構の医学、工学、社会学、情報学など様々な専門分野の教員・研究員より、「いま、伝えたいこと」をリレーメッセージとして掲載します。

第3回

暮らしを楽しみ、社会がつながるアイデアを

菅原育子 菅原育子 東京大学 高齢社会総合研究機構・未来ビジョン研究センター 特任講師

新型コロナウイルス感染症の拡大によって、いま私たちの暮らしは様々な影響を受けています。

わからないことや予想がつかないことだらけですので、不安でとても弱気な心持ちになることも、逆につい強い言葉を使ってしまうことも、あるかもしれません。

しかし、こんな状況だからこそ、小さなことでもいいから新しいこと、出来ることに目を向けられたらと思い、このメッセージを記しています。

私が、研究活動を通して人生の先輩方のお話をうかがってきた中で、いつも驚かされてきたことは、前向きに人生を開拓してきた方々の強さとしなやかさです。長い人生で様々な困難にぶつかりながら、大きく落ち込むことがあったとしても、人はそれを乗り越え、経験から学び、新しい道を見つけていきます。

この新型コロナウイルス感染症は、いま人類社会に挑戦をしかけていますが、私たち一人ひとりには、それを乗り越えていく経験や知恵があるのだと考えています。

現在、日常生活の中で特に制限されているのが、社会的な活動です。

他人と接する機会を極力減らそう。他者と物理的な距離をとろう。これらは、感染症の拡大を防ぐために私たち一人一人が出来る、とても大事な取り組みです。

その反面、誰とも接しない暮らしを続けることも、私たちの心身の健康には良くありません。

私たち人間の健康にとって、社会的な活動は、運動することや栄養に配慮した食事を摂ることと同じように大切なことです。

家の中で過ごす時間が増えることで、同じ顔ぶれとずっと一緒にいるがゆえの衝突やイライラが起きることもあります。窓を開けて換気をするように、時々家の外の社会とつながりを持つことは、家族みんなが健やかに過ごす上でも有意義です。

では、外出を控え、距離をおきながら、社会的な活動を続けるってどういうことでしょうか?

「社会的な活動」には、人と顔をつきあわせることなく出来ることがたくさんあります。電話で誰かの声を聴いたり、FAXやお手紙で誰かの馴染みの筆跡を見るだけで、ほっとします。ご近所の方に、ベランダ越しやインターフォン越しに声をかけるだけで、その方の役に立てるかもしれません。

家にいながら離れた人と会話も仕事も出来る、新しい技術がどんどん生まれています。今は新しい技術に挑戦する良い機会です。スマホやタブレットなどデジタルコミュニケーションの道具を普段使いしている方は、近くに不慣れな方がいらしたら教えてあげてみませんか。初めは難しくても、この挑戦が、自粛期間終了後の暮らしを豊かにするきっかけとなるかもしれません。

運動や趣味の活動も、仲間と集まっては出来なくても、私はこんなことをしているよと教えあうことはできそうです。

このように、アイデアを持ち寄って、暮らしにひと工夫してみるのはいかがでしょうか。

新型コロナウイルス感染症のために様々な制限が生じていますが、長年の趣味や特技、人生経験が生かされたり、新しいアイデアが広がる機会となることは、喜ばしいことです。それらのアイデアは、この感染症を乗り越えたあとの新しい生き方、社会のあり方に、きっと反映されていくことでしょう。

今回、高齢社会総合研究機構のみんなで、健康な暮らしの維持に大切なことと、暮らしを楽しむアイデアを集めてみました。これを見たみなさまから、更に面白い、素敵なアイデアが生まれていくことを楽しみにしております。

(2020年5月1日)