シニアのためのおうち時間を楽しく健康に過ごす知恵 シニアのためのおうち時間を楽しく健康に過ごす知恵

高齢社会総合研究機構
教員・研究員からのリレーメッセージ

高齢社会総合研究機構の医学、工学、社会学、情報学など様々な専門分野の教員・研究員より、「いま、伝えたいこと」をリレーメッセージとして掲載します。

第6回

ウイルスの流行は動物の世界にもある ~人間だからできること~

高瀬麻以 高瀬麻以 東京大学 高齢社会総合研究機構 特任研究員

新型コロナウイルスの流行が私たちの生活に影を落とし始めて、早二カ月が経とうとしています。普段は家でゆっくりと過ごすことが休息になりますが、自粛が課され、さらにその期間がどのくらい続くかの見通しがつかない状態では気分も塞ぎがちになります。でも実は、ウイルスの流行は自然界の中でも起こっていることなのです。

― 自然界でもウイルスは流行する ―

自然界の動物を研究とする生態学者や生物学者は、時に動物に感染するウイルスの調査をすることがあります。例えば、ウミガメに感染するフィブロパピロマ・ウイルスは感染した個体に腫瘍を作り、顔や首回りの腫瘍が大きくなりすぎると視界を遮ってしまうなどの問題も起きます。自然界の生物は症状の原因がウイルスによる感染であることを知る由もなく、予防策を講じることもできません。その環境の中で生き、感染した場合はただ運命を受け入れるしかないのです。

現在我々が行っている自粛生活は、住み慣れたお家で過ごす取り組みではありますが、精神的な負担を感じるものです。ただ、ご自身・ご家族・周りにいるお知り合いの方を守るために自粛生活をし、アルコールで消毒をし、マスクをつけるなどの予防策を実行できるのは人間だからできることなのです。

― 悪い状態が元に戻る時は、一旦崩れる ―

風邪をひいたとき、治りかけの時にお腹を壊したことはありませんか?そしてお腹の調子が回復すると同時に、気が付いたら風邪も治っていた経験がある方もいるかもしれません。人間の体はこのように、悪い状態が回復する前に一旦調子が崩れることがあります。雨降って地固まるという言い回しがありますが、新型コロナウイルスが流行している今の状態を「悪い」とするなら、辛くても自粛をしている今が一旦崩れている状態なのかもしれません。ここを耐え抜くことができれば、次はきっと徐々に良い状態に戻っていくと考えます。

― 人間だからできること ―

人間だから自粛ができる、そして今の状況は自体が改善する前段階だとすると、私たち人間だからできることがもう一つあると思います。それは、自粛生活をただ耐え忍ぶだけではなく、何らかの形で「もう一回り強くなる期間」という意識を持つことです。ニュースなどを見ていると自粛生活で打撃を受けている話を多く聞きます。その状況下で、強くなるという言葉を発するのは浅はかなのかもしれません。ただ、辛い中でさらに辛いことを想像するより、一旦前を向いて、これまで出来なかったことにチャレンジしてみるのはいかがでしょうか。今回、高齢社会総合研究機構で作った「おうち時間を楽しく健康にすごす知恵―おうちえ」は、自粛中でも健康に過ごすことができ、さらに自粛後の生活がより良いものになるアイディアが沢山詰まっています。この機会に是非お目通しいただけますと幸いです。

(2020年5月16日)