シニアのためのおうち時間を楽しく健康に過ごす知恵 シニアのためのおうち時間を楽しく健康に過ごす知恵

高齢社会総合研究機構
教員・研究員からのリレーメッセージ

高齢社会総合研究機構の医学、工学、社会学、情報学など様々な専門分野の教員・研究員より、「いま、伝えたいこと」をリレーメッセージとして掲載します。

第14回

心を健やかに整え、ほんの少しだけ先を描く

梅本大輔 梅本大輔 東京大学 高齢社会総合研究機構・先端科学技術研究センター 特任研究員

緊急事態宣言の中、皆さまがどのようなお気持ちでお過ごしになったか想像が及びません。私自身も、自粛生活を乗り切ることに精一杯です。

私の専門を一言で表すとまちづくりですが、医療や介護、教育、サービスなど最前線の領域で頑張られている多くの方を思うと、一体何ができるのだろう、と自問するばかりです。そのような私ですが、東日本大震災で被災された方々から復興に向けた前向きで力強い多くのお話をお伺いし、大変な感銘を受けた経験から何かしらのメッセージをお届けできるかもしれません。

―Every Day is A New Day―

ヘミングウェイの「老人と海」で、不漁続きの中、老人はこの言葉とともに力強く船を漕ぎだしていきます。解釈は多々あれど、なんとも物寂しく不思議な空気感でラストを迎えるのですが、老人の闘いは、「人間は負けるようにできてはいない」ことを教えてくれ、強く勇気付けられます。新しいことが毎日に起きている、起こそう、というその志に人は魅了されるのかもしれません。「大丈夫、負けねぇよ。」― 何度も津波災害に遭われてきた三陸海岸の漁師の方の言葉が頭をよぎります。

まちづくりの歴史を紐解くと、災害や流行病、大火、公害、戦争など幾多の困難の中、人生の先輩方がハードとソフトを織り交ぜて乗り越えてきたことに気付かされます。先人たちの気概に倣いながら、現代の知恵をもとに「しなやかな暮らし」を発見してウイルスに打ち勝つ日は、そう遠くないと考えています。

それまでの日々、明るい話題がなければ人は生きてはいけないことも過去の災害などが教えてくれます。偉大な先人がこのような言葉を残しています。「俯いていたら、虹は見えないよ。」とチャップリンは言い、坂本九は「上を向いて歩こう」を歌っています。

その言葉を思い起こしながら、僅かずつでも心に栄養となることを思い描き、心を健やかに整えるための第一歩を踏み出してみませんか。

―少し先の“暮らし方”と“好き”・みなさんの「おうちえ」―

巣ごもりは、家族間の悪い面が報道されていますが、コミュニケーションの取り方が変わることなどで家族の意外な一面が垣間見られることもあったのではないでしょうか。

これを機に、家族や親しい方との新しい一歩を踏み出してはいかがでしょうか。おうちえ巻末に載せた『わたしの「おうちえ」』のように、これからのことややりたいこと、気づいたことなど思いつくままに付箋などで可視化してシェアすることも一つのアイデアです。普段、知らなかった親しい方の興味や好み、自分の新しい一面に出会うかもしれません。発見した新しい“暮らし方”や“好き”が詰まった『わたしの「おうちえ」』が集まると、『みなさんの「おうちえ」』ができるかもしれません。時には、旅行やイベントのプログラムに発展することもあるでしょう。安心できる環境になった時やそれまでの間に、家族や親しい方と私で“暮らし方”や“好き”を実行してみましょう。

是非、『みなさんの「おうちえ」』を探してみてください。

(2020年5月28日)