参加企業

大和ハウス工業株式会社

ニュータウンの”再耕”に向けて

リブネスタウン事業推進部
田中 紀之 氏

住民と大和ハウス、大学関係者等で開催するまちづくり協議会の様子

高齢化した団地の課題解決に向けて

私は入社してすぐジェロントロジー寄付研究部門の立ち上げを担当するなど、IOG設立前から東京大学と関わってきました。2016年からはIOGへ出向して、自社で過去に開発した住宅団地を再耕する(再び魅力のあるまちにする)取り組みについて先生方からの指導やアドバイスを受けていました。そうした中で、IOGからまちづくり標準化研究会の共同研究にお声がけをいただき、当社から私を含め5名のメンバーが参加しています。
私が所属しているリブネスタウン事業推進部は、住宅団地の再耕事業を行う部隊として組織されました。複数のモデル地区が設定されており、その一つが神奈川横浜市の上郷ネオポリスです。
人間と同じように街も高齢化します。開発から40年以上経過した団地の多くは、少子高齢化や空き家・空き地の増加、建物の老朽化など、さまざまな課題を抱えています。上郷ネオポリスは、1972年に販売を開始した広さ約46ha、総戸数868戸の大規模戸建住宅団地で65歳以上の人口比率は約50%に達しています。かつては商店や飲食店が並んで賑わっていましたが、今はほとんど閉店してしまいました。住民の方々が立ち寄ってお茶を飲んだり、話をしたりする場所もありません。今お住まいの方々が安心して住み続けるためには何が必要か、また、外から入居したくなるような魅力ある街にするためには何が必要か、という議論から団地の再耕プロジェクトが始まりました。

団地再耕の成功事例を全国へ展開

団地を再耕するためには、そこで暮らす住民の方々とともに計画を練る必要があります。行政や企業の協力も欠かせません。東京大学の研究機関であるIOGと再生事業に取り組むことは、そうした関係者の理解を得るうえで大きなプラスになりました。調査の結果、買い物・交通の不便、高齢者の見守りや支えあいなどのニーズが高かったことから、2019年10月にコンビニ併設型コミュニティ施設を作りました。施設の運営を住民のボランティア参加で担うほか、移動販売車の出店や地域通貨の導入など、団地の再耕は順調に進んでいます。さまざまな分野で活躍されているIOGの先生方の知見に基づくアドバイスも、プロジェクトの大きな力になりました。また、IOGのアカデミーに若手のメンバーが参加して、暮らしに関わるテーマを体系的に学んでいます。専門家の方々や異業種からの参加者、大学生など、文化や考え方の違う人々と接点を持つことは、とても刺激的で新しい発見や発想をもたらしてくれます。上郷ネオポリスの再耕プロジェクトの発表などを通じて、アカデミーに参加している企業との連携に繋げていきたいと考えています。
ニュータウンと呼ばれる団地は全国に3000以上あると言われています。上郷ネオポリスのプロジェクトを成功事例として、団地再耕事業を全国で展開するのが私たちの目標です。

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