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3年にわたる柏市での大規模高齢者虚弱予防研究「栄養とからだの健康増進調査」が終了

東京大学高齢社会総合研究機構(IOG)では、2014年9月4日(木)から10月10日(金)まで千葉県柏市において「栄養とからだの健康増進調査」を実施しました。 この調査は柏市の協力を得て、加齢による心身機能の低下、特に筋肉量(骨格筋量)の減少、いわゆるサルコペニアの原因の解明を目的とし、2年前に大規模高齢者健康増進調査としてスタート。後期高齢者の方々にもご参加いただけるように、調査団が柏市内の14か所の保健センターや近隣センターを巡回しながら行われました。 具体的には、高齢期の方々(自立~要支援)の全身の栄養状態と食事摂取状況、体の筋肉量や筋力、歩行速度なども含めた様々な身体能力に加え、噛む力や飲み込み、舌の力の強さといった口の機能、そして社会性や精神心理など、普段の健康診断では手が届かない多岐にわたる調査項目を設定し、将来、食べる力や飲み込む力、そして体の筋力が落ちやすいのはどのようなケースかを調べようというものです。 最終年である今年、2012年の初回時に無作為抽出された2044人のうち、健康状態がかなり悪化してしまったり、様々な事情により来られなかった方を除く1308人(内訳は前期高齢者708名、後期高齢者600名)が受診。今後数か月にわたって得られたデータを解析し、平成27年3月頃には調査結果を公表する予定です。高齢者における「食」というものを改めて原点から考え直そうと始まったこの調査、最終的には、より健康的で、かつ介護になりにくい要素の解明(エビデンス)と、社会性が盛り込まれた包括的な改善プログラムの開発を目指しています。

1 会場全景。2014年9月4日から10月10日の期間中、柏市内の14か所で実施しました。
2 「生きがい就労の創成」プロジェクト(2010年~2013年)で集まった柏市の高齢者メンバー、「就労スタッフ」が運営に参加しました。スタッフ用の緑のTシャツが目印。
3 受付を終えると「問診・採血」へ。
4 「体組成」測定コーナー。ここでは筋肉量や体脂肪率、水分量など数多くの情報が分かりますが、特に四肢(手足)の骨格筋量に注目しています。
5_1 栄養状態を表す指標として、次の2つの新規指標も含め、二の腕、ウエスト、太もも、ふくらはぎの周囲径など、数多くの項目に注目しています。 (1)手の親指と人差し指の間の厚さ(写真) (2)「指輪っかテスト」(イラスト)
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6 認知機能を調べるMMSE検査(Mini Mental State Examination)。「就労スタッフ」がここでも大活躍しました。
7 続いて、身体機能測定。握力(写真上)とピンチ力(親指と人指し指で物をつまむ力:写真下)をそれぞれ専用の機械で測ります。その後、片足立ちでバランスを取る能力、膝の伸展力、足腰の立ち振る舞い(Timed Up & Go test)、座り立ちテストなども検査しました。
8_1 ロコモティブシンドロームを簡単にスクリーニングするために、以下の2つの検査が行われました。 (1)「立ち上がりテスト」。足腰の力強さとバランス能力が大きく問われます。(2)「2ステップテスト」。できるだけ大股で2歩歩き、その合計から値を算出(身長補正)し、年代に相応かどうかを判断します。
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口腔検査では、歯科医師や歯科衛生士によって、歯式(残存歯の数や機能している歯の数と位置、等)、嚥下能力、総合咀嚼力と最大咬合力、滑舌、舌圧などが検査されました。
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歯科口腔ブースの様子 歯科医師による舌筋エコー厚検査 舌圧測定
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ガム(写真下)咀嚼による総合咀嚼力測定の装置 オーラルディアドコ(滑舌)検査器具。被験者に「パ」「タ」「カ」の単音節をそれぞれ10秒間ずつ、できるだけ早く繰り返し発音してもらい、1秒あたりの発音回数を測定。  
主な検査項目
採 血 メタボ検査 低栄養検査(Alb・コレステロール・リンパ球数・ヘモグロビン等)
聞き取り 精神的健康状態(WHO-5)・うつスケール・学歴・お口の健康度(GOHAI)・生活のひろがり・ころばない自信・入浴・休まず歩ける距離・人とのつながり・認知機能(MMSE)・転倒スコア・社会関係資本・ヘルスリテラシー・身体活動量・手段的自立度(IADL)、食事摂取調査(BDHQ)、等
身体計測 身長・体重・体組成・腹囲・周囲径(上腕・大腿・下腿)・第1‐2指間厚・大腿四頭筋エコー厚
運動機能 開眼片足立ちバランス・歩行速度・椅子座り5回時間・握力・ピンチ力・TUG (Timed Up & Go test:足腰の立ち振る舞いの俊敏さ)・膝伸展力・ロコモ度チェック
口 腔 歯数・噛み合わせ・RSST・オーラルディアドコ(滑舌)・舌圧・口腔湿潤度・咀嚼力/咬合力(グミ咀嚼・ガム咀嚼・プレスケール)・口腔細菌数・口内鮮血テスト・舌筋エコー厚