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「日中の超高齢社会に関する学際的研究シンポジウム」開催

2024年7月27日に人文社会系研究科社会学研究室の教員が、中国・上海市の華東師範大学経済管理学部公共管理学院を訪問し、同大学普陀キャンパス弁公楼小講堂で以下の国際交流シンポジウムを開催しました。本シンポジウムは、社会学研究室・華東師範大学・中国民政部政策研究センターが主催し、東京大学高齢社会総合研究機構・華東師範大学公共管理学院・華東師範大学老齢研究院の共催により実施されました。

【開幕式】

  • 華東師範大学校務委員会副主任・老齢研究院院長・孟鐘捷教授
    中国の人口高齢化は速度が速く、規模も大きいため、高齢化の後発国として、日本などの先進国の政策設定・改革の考え方・実施効果を研究することが、中国にとって自国の状況に適した高齢社会政策体系を選択・発展させることになると述べました。
  • 東京大学副学長・佐藤健二名誉教授
    華東師範大学からの招待に東京大学を代表して謝意を表し、本シンポジウムは、各研究者の多様な学問的背景が専門的な視野を広げ、新たな研究のインスピレーションを生み出すことになると述べました。
  • 民政部政策研究センター・王克強主任
    中国が現在直面している高齢化問題は、日本が直面した問題と同様であり、日本の高齢化対策の発展過程と先進的な経験を重視すべきだと述べました。
  • 中国社会保障学会会長・中国人民大学・鄭功成教授
    中国の高齢化は規模が大きく、速度も速いという特徴を持ち、高速高齢化、少子化、家庭機能の弱体化が伴うことから、挑戦的な課題であると指摘しました。本シンポジウムの開催は、中日両国の高齢化研究と交流を推進させていく上で、重要な歴史的意義と実践的意義を持っていると述べました。
孟鐘捷教授
佐藤健二名誉教授
王克強主任
鄭功成教授

【セッション1 超高齢社会における文化と介護】

  • 佐藤健二名誉教授:「耄碌の思想:柳田国男と鶴見俊輔における老いのとらえ方」について
  • 南京大学・林閩鋼教授:「中国高齢者福祉における『家と国の一体化』をいかに再構築するか:高齢文明に基づく考察」について
  • 武川正吾名誉教授:「日本の高齢化と社会政策」について
  • 華東師範大学老齢研究院執行院長・呉瑞君教授:「人口減少時代における中国の高齢化の特徴、動向及び対策」について
  • 民政部政策研究センター・王克強主任:「中国特色のある介護サービスの発展と展望」について
林閩鋼教授
武川正吾名誉教授
呉瑞君教授

【セッション2 超高齢社会におけるケアと支援】

  • 華東師範大学・鐘仁耀教授:「認知症ケアサービスの地域格差に関する分析」について
  • 井口高志准教授(IOG兼任教員):「日本社会における認知症との共生の現在と課題:『認知症基本法』の論理と今後の課題を読み解く」について
  • 祐成保志准教授(IOG兼任教員):「超高齢社会における居住政策」について
  • 華東師範大学・黄忠華教授:「中国特色のある住宅保障と不動産の新モデル」について
  • 民政部政策研究センター・于建明研究員:「社会救助における『協同』」について
鐘仁耀教授
井口高志准教授
祐成保志准教授
黄忠華教授
于建明研究員

【セッション3 超高齢化社会における家族と組織】

  • 赤川学教授:「猫を看取る経験の構造的把握:猫社会学の挑戦」について
  • 金成垣教授:「韓国における超少子化をいかに捉えるか」について
  • 米澤旦准教授:「変容する日本型福祉社会:市場化の進展と社会的企業の新たな役割」について
  • 華東師範大学・翁士洪教授:「中国高齢者サービスにおけるNPOの役割と動向」について
  • 税所真也助教(IOG兼任教員):「個人化社会における居住支援:生活協同組合ワーカーズコレクティブによる任意後見事業」について
  • 華東師範大学・張継元副教授:「中国社会後見サービスのシステム構築と動向」について
赤川学教授
金成垣教授
米澤旦准教授
翁士洪教授
税所真也助教
張継元副教授

【閉幕式】
共同主催者として東京大学高齢社会総合研究機構・副機構長の祐成保志准教授が、同機構長・飯島勝矢教授からの謝意を伝えました。そして、同機構の設立背景や研究ビジョン、組織構造について紹介しました。

つづいて、武川正吾名誉教授が挨拶しました。武川教授は、長年にわたる中国と日本の学研究者の交流と連携の歴史に触れ、今後も学術交流を通じて相互の関係をさらに深化させていくことを提唱しました。そして、今回の会議で得た知識や洞察を今後の学術会議や論文に活かしていくことを期待すると述べました。

さらに、民政部政策研究センターの王克強主任が発言しました。王主任は、専門家や学研究者が学術成果を政策に反映させていけるよう、支援していきたいと述べました。

さいごに、華東師範大学の鐘仁耀教授が閉幕の辞を述べました。鐘教授は、本シンポジウムが中日高齢社会研究の交流を推進させるための出発点になることを期待すると述べました。