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機構長からのご挨拶

飯島勝矢

飯島勝矢
東京大学 高齢社会総合研究機構 機構長
東京大学 未来ビジョン研究センター 教授

東京大学高齢社会総合研究機構は、「ジェロントロジー寄付研究部門※1」の3年間の活動を踏まえ、平成21年4月より東京大学の総長室総括委員会の下に設置されました。我々の研究活動の全体像をご紹介いたします。

現在、我が国日本は平均寿命をさらに更新しており、女性87.3歳、男性81.3歳(2019年7月時点)の世界最長寿国であります。さらに我が国の高齢化率も世界最高28.4%(推計3,588万人)となっており、しかも80歳以上の後期高齢者が著しく増加するという、かつてどの国も経験しなかった超高齢社会を迎えております。
そのなかでも「人生100年時代」に突入してきているとも言われ、老いは避けられないなかで、個々の国民にとってこの時代をどうにか元気で乗り切り、生き切った人生にするために、一体どのようにことに気をつけるべきなのでしょうか。さらには、どのような地域社会を再構築し、どのような国の方向性が求められているのでしょうか。
人口高齢化の勢いはかなり速く、その影響は医療・福祉領域にとどまらず、経済・産業・文化の広い領域で相互に関連する複雑な課題を提起しております。例えば、労働に従事しない依存人口比率の上昇、認知症や虚弱(フレイル)高齢者の介護、高齢者就労の推進における課題、多世代交流の減少、等、深刻な問題が顕在化し、かつお互いの問題が複雑に絡み合っている状態になっております。また、そこには経済的問題も根深く関連しております。その一方で、比較的元気な高齢者を地域における大きな人的資源と捉え、居住地域での活躍の場や通いの場等の創出、さらには新しい雇用や産業の誕生に対する期待も高まっております。こうした課題(マクロ視点もミクロ視点も)を総合的に解決するためには個人の長寿化と社会の高齢化に応じた新たな価値観の創造(少子高齢化現象に対する考え方のパラダイム転換)と 社会システムの抜本的見直しが必要不可欠であります。そして、そこには多分野における領域横断の学際的研究の貢献が期待されております。

そこで、超高齢社会の広範で複雑な課題を解決するためには、医学、看護学、理学、工学、法学、経済学、社会学、心理学、倫理学、教育学などを包括する新しい学問体系を築くことが必要です。そのような総合的学問体系であるジェロントロジーは、高齢社会の諸課題解決に先導的な役割を担う使命をもっています。
本機構では、高齢社会の諸課題に有効にかつ柔軟に取り組めるよう学際的なチームでプロジェクトが組めるようになっております。世界最長寿国であるがゆえに他の国々に先駆けて顕在化している高齢社会の重要課題に対して全学的な知を結集して取り組み、総合知としてジェロントロジー学を推進すると共に、エビデンス・ベースの政策・施策提言(evidence based policy making: EBPM)を行っていくことを目指しております。また、ジェロントロジーという俯瞰的視野から問題解決を志向する次世代研究者の養成を行うと同時に、大学外にも広く門戸を開き、他大学や民間も含めた他の研究機関、産業界、行政、地域で活動されている方々と一緒に意見交換し、共に課題解決型の実証研究を通して活動していきたいと考えております。
さらに、本機構は2020年4月から連携研究機構という形で、さらに多岐にわたる活動を加速させていきます。特に、本機構の特徴は以下の5つでございます。

【1】分野横断型の多様に融合されたアクションリサーチ:

エビデンス構築によるSDGsやSociety5.0の実現と経済成長の基盤形成・卓越性の追求

【2】地域連携~地域協創:

全国の数多くのモデル自治体フィールドとの協働による課題解決型実証研究 (アクションリサーチ)

【3】産学官民協働拠点:

多様な主体による学術成果の社会への還元戦略的イノベーション創造産学連携ジェロントロジープロジェクト

【4】国際連携活動:

国際共同研究の推進国際ネットワークの形成

【5】東京大学高齢社会総合研究国際卓越大学院WINGS-GLAFS(World-leading Innovative Graduate Study Program in Gerontology: Global Leadership Initiative for Age-Friendly Society) への協力支援:

修士・博士一貫の分野横断的教育プログラムを通じて高齢社会問題に取り組む博士レベルのエキスパートを養成



最後に、社会の高齢化はグローバルな現象であり、最長寿国である日本の取り組みに全世界が注目しております。国内の課題に総合的に取り組みながら、我が国のあるべき将来像を打ち出しながら、さらに国際的にも積極的にネットワークを構築し、グローバルな研究・教育活動を展開していく所存です。皆さまのご支援、ご意見、ご提案、忌憚のないご批判をお願い申し上げます。


※1 平成18年4月に、総長室総括プロジェクト機構の活動の一つとして、日本生命保険相互会社、セコム株式会社、大和ハウス工業株式会社の3社からの寄附金により設置。平成21年3月まで3年間活動を行った。